*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
「あの時の……」
「思い出した?」
修ちゃんの問いに頷く。
河川敷に立つ男性に衝動的にハンカチを押し付けた私は、我に返って恥ずかしくなって、その場を逃げるように去ったのだ。
恥ずかしくてその人の顔を正面から見るなんて出来なかったから、顔のことは覚えていない。
印象に残っていたのは、綺麗な涙だけ。
でもまさか、それが修ちゃんだったなんて……
「あの時からなんだ。」
「え?」
思考がストップした。届いた言葉が理解できない。
「今なんて、」と聞き直そうと思った時、修ちゃんが先に話し出した。
「あの時から俺の心の中にはずっと杏奈がいた。」
綺麗な瞳が自分を見下ろしている。甘く光るその瞳は、まるで宝石みたいで―――
「自分でも最初は良く分からなかったけど、俺はあの時君に恋に落ちたんだ。」
すぐ近くから降るテナーボイスは、たっぷりと甘さを含んだ蜜みたいで―――
「一緒に暮らして君のことを好きなんだと気付いたんだ。」
夢のような彼の告白に、私の心臓は痛いくらいに締め付けられている。