*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
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「えっ!!今日これから!?」
携帯を耳に当てた修平さんが驚いた声を上げる。
自分の気持ちを口に出すことが出来ずに黙り込んでしまった私と、そんな私を窺うように見つめていた修平さんとの間に、突然割って入った着信音は、今まさに彼が話している電話の相手からだった。
「いや、それは無いけど…いきなり言われてもこっちも都合が……うん、まあ、それはそうだけど……う~ん…」
困ったように眉を下げて考え込んでいる姿の彼に、また仕事のトラブルが起こったのかと心配になる。
少し前にも、今みたいにかかってきた電話に呼び出され、職場に行ったきり中々帰ってこれないことがあった。
私が眠っている間や出勤中に帰宅する彼との、すれ違いの数日間は記憶に新しく、今思い返しても切ない気持ちになってしまう。
今思えば、それがあったからこそ本当の意味での恋人同士になることが出来たのかもしれないけれど、あの時の寂しかった気持ちを思い出すと、やっぱり仕事のトラブルであって欲しくない、と思う。
そんなことを考えながら、電話中の彼の横顔を見つめていると、フッと彼が私の方に顔を向けた。
「うん…とりあえず聞いてはみるけど、保証はしないからな。…ああ。また折り返す。じゃ。」
そう言って通話を終了させた修平さんは、私に体を向けて向かい合って、言い辛そうに口を開いた。
「友人が二人、これからここに遊びに来たいって言ってる。もしも杏奈が嫌なら、断るから遠慮しないで言って欲しい。」
「え?」
「一人は杏奈もちょっとだけ会ったことがあると思うのだけど、俺の同僚の葵。」
その名前を聞いた途端、胸がズキリとした。
『仕事が出来る大人の女性』を絵に描いたような彼女は、私にはとうてい及ばないくらい美人で素敵な女性。
その彼女がここに、いったいどうして来るのか、一気に不安が胸に押し寄せる。
彼女の顔が脳裏にこびり付いて離れなくて、上の空になった私の耳には、修平さんが話す『もう一人の友人』の説明が、少しも届かなかった。