*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
「きれいな杏色…すごく美味しそう。」
収穫した実を持ち帰って、早速キッチンで洗ってみた。
沢山採れた杏の実は、どれもつややかで張りが良い。見るからに食べごろだ。
「好きなだけ食べたら良いよ。」
修ちゃんはそういうけれど、いくら食いしん坊の私でも、こんなに全部食べ切れそうにない。
「う〜ん……あっ!ジャムにしよう!」
「ジャムに?」
「うん。アプリコットジャムなら保存も効くし。それに沢山作って千紗子さんや遥香さんにお裾分けしてもいいしね。」
実は前にヒロ君とジャム作りにハマったことがあるから、作り方なら分かる。
「千紗子さんと言えば……」
休暇明けに有った千紗子さんは、前よりも顔色が良くなっていた。
けれどやっぱりつわりが重いらしく、無理をするとお腹の赤ちゃんに影響が出てしまうとお医者さんから言われたらしく、今月いっぱいで退職することになった。
「寂しくなるな、杏奈。」
「うん……」
正直、その話を職場で発表するよりひと足早く千紗子本人から聞いた時、半泣きになるほどショックだった。
寂しいなんて、そんな簡単な言葉じゃ言い表せない。
けれど、本当は千紗子さんだって辞めたくなんてないのだ。
お腹の赤ちゃんを守るために大事な決断を下した彼女を前に、私が泣いてはいけない。そう思ったから涙を堪えることが出来た。