*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
 「やっぱり、いくらなんでも急すぎるから断ろう。」

 ぼんやりとしていたところに、修平さんのきっぱりとした声が耳に届いて、意識が引き戻される。

 「え?どうして?」

 「あいつら、夕飯に合わせて来たいみたいだから、そうなるとあと三、四時間くらいしかないだろ?杏奈はまだベッドから出れそうにないし、それに杏奈は明日からまた連休で忙しいだろう?今日はしっかり休んだ方がいいと思うんだ。」

 「修平さん…」

 私のことを気遣ってくれる彼の優しさに、心がほんわかと温かくなる。

 「また別の日にしてもらうように、連絡しとくから。」

 そう言って、スマホを持ち上げた修平さんのその手を、反射的に掴んだ。

 「待って!」

 「杏奈?」

 「私なら大丈夫…明日は遅番だし、ゆうべはぐっすり眠ったから元気だよ。今はちょっと、その、動きづらいけど…もう少ししたら動けるようになると思うし…」

 言いながら恥ずかしくて頬が赤くなる。
 私の言葉を聞いている修平さんは、納得できなさそうな顔をしている。

 「確かに時間があんまりないから手の込んだものは用意できないけど、それでも良ければどうぞ、って連絡してもらえる?」

 そこまで言っても修平さんの顔は曇ったままだ。
 彼のその表情が、私を心配してるからだと分かって、私は慌てて理由を付け足した。

 「本当はねっ、…私が修平さんのお友達に会ってみたいのっ」

 早口にそう言うと、彼のアーモンド形の瞳が丸く見開かれた。

 「私の知らない修平さんの話、聞いてみたいし……だめ、かなぁ?」

 おそるおそる視線を上げると、目を見開いたまま固まっている彼と目が合う。
 数秒間そのままでいると、彼の方がフッと息を吐いて眉を下げた。
 それから私の肩を抱き寄せて、額にチュッと口づける。

 「もう、そんな可愛い顔でおねだりするなんて、ずるいよ、杏奈。」

 そう言いながら、こめかみ、頬、鼻先、と次々にキスの雨を降らせる。

 「修平さん!?」

 「杏奈には敵わないな。言う通りに連絡しとくよ。」

 「ありがとうっ!!」

 思わずその首に抱きつくと、「でも無理はしないでよ」と、困ったような嬉しそうな微妙な表情を浮かべた修平さんは、私の唇に優しく唇を重ね合わせた。
 そのまましばらくの間、甘い口づけに時間を忘れた。
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