*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!

 「やっぱりもう一個指輪を買いに行こう。」
 
 「ええっ!!」

 (他の指輪は要らないって、あの指輪がとっても気に入ってるって、あんなに説明したのに!!)

 (一生懸命説明して大笑いされたのに!)という私の不満が伝わったのか、修ちゃんは微苦笑を浮かべて私の左手を握り直した。そしてその手の親指で私の薬指をゆっくりと撫でる。

 「確かにあの指輪は実用向きじゃないもな。石が大きいから引っ掛かりやすそうだし、家事とか仕事中に着けてたら邪魔っぽい。」

 「ちがう、邪魔だなんて」

 「うん、杏奈の言いたいことは分かってる。」

 『邪魔だなんて思ったことない。作業中に傷つけたり失くしたりするのが嫌なだけで、指輪自体が邪魔でなわけじゃない』と言おうとした私の言葉をそう言って遮った。

 「あの指輪を杏奈がとても気に入ってくれてるのは十分伝わったよ。大事だから大切にしてくれてるんだって。」

 彼の言葉にうんうんと頭を振る。
 そんな私に微笑んで、修平さんは言葉を続ける。

 「でもそれだといつまでもここが空いたままだ。」

 そう言って私の指を彼の長い指が再度スルリと撫でた。
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