*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
 いつものように頭を撫でてくれる大きな手が心地良くて、うっとりとしたけれど、強い視線を感じてハッと我に返る。

 (い、いけない!ここは職場だった!!)

 辺りをキョロキョロと見回すと、先輩図書館員と目が合った。
 目が合った先輩は、何か言いたげな顔つきでニヤリと笑ってから、私の隣に立つ彼にペコリと頭を下げてから、持ち場へ戻って行く。

 (やだっ、後で絶対からかわれる!)

 このままではいけないと思った私は、慌てて彼を見て口を開いた。

 「私今から休憩なのっ!修平さんはもう帰るの?」

 「いや、杏奈の休憩を待ってたんだ。雨宮さんに杏奈の休憩の時間を聞いておいたから、一緒にお昼を食べようと思ってね。」

 「千紗子さんに?」

 (いったいいつの間に…。だから千紗子さんはさっき私に休憩を勧めてくれたんだ…)

 彼女の優しげな微笑みを思い出しながら、ついさっきの遣り取りを振り返る。

 「お昼今からだよね?杏奈。」

 「うん。…あ、でも私これからお昼ご飯を買いに出るつもりで…」

 この連休の忙しさで毎朝起床がギリギリになってしまって、いつも作っているお弁当をここ数日は作れずにいた。
 今日は休憩に入ったらすぐに、近くのコンビニまでひとっ走りするつもりだったのだ。

 「ああ、そう思って杏奈のお昼も持って来たから、一緒に食べよう。外にアンジュを待たせてあるんだ。杏奈は必要な物だけ持ってきて。従業員出口の外で待ってるから。」

 「う、うん…。」

 何がなんだか良く分からない間に、パパッと指示を受けた私は、とりあえず彼の言うことに頷く。

 「じゃ、後で。」

 と言った修平さんは、私に手を振ってから出入り口の方へと歩いて行ってしまった。

 (よく分からないけど、修平さんをお待たせしちゃ悪いから、早く行かなきゃ。)

 そう思った私は、小走りでバックヤードの廊下を進んだ。
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