*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!

 玄関で靴を履く彼を黙ったまま見つめた。

 急な状況に、頭がぼうっとして言うべきはずの言葉すら出てこない。

 靴を履き終えた修平さんがクルリとこちらを振り返った。
 修平さんは、上り框で私の横に座って彼を見送るアンジュの頭をひと撫ですると、顔を上げて私を見た。

 平然としていた彼の瞳が、一瞬揺らいだ。
 その揺らぎに、彼の感情が垣間見える。

 ドクン、と心臓が跳ねた。

 けれどその揺らぎは、すぐに優しい微笑みにかき消されてしまう。

 「じゃあ、行ってきます。杏奈は無理しないで。戸締りちゃんとして。」

 そう言って私の頭をそっと、まるで壊れ物に触れるような優しさで撫でた後、彼はクルリと身をひるがえして出て行った。



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