*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!

 「千紗子さん…」

 なんとなく呟いた言葉が千紗子さんの耳に届くより早く、彼女の方が話し出す。

 「杏ちゃん、良かったらうちでお茶でもどう?美味しい紅茶を頂いたの。この後、何か用事がある?」

 「いえ、用事はないんですが……」

 ちらりと足元のアンジュに視線を遣った私に、千紗子さんは言葉を続けた。

 「うちのマンション、ペット可なの。私も一彰さんも犬大好きだし、…あっ、今彼は出かけてるから、遠慮は要らないのよ?」

 千紗子さんの提案はどれも私にとって都合の良いものばかりで、断る理由も見当たらない。

 正直、今は家に帰りたくなかった。
 誰もいないあの大きな家に帰宅するのは、今の私には寂しすぎる。
 きっと静まり返った家で、一人悶々と考えてしまって落ち込んでしまうのは目に見えている。

 「えっと…じゃあ、お言葉に甘えてもいいですか?」

 「もちろんよ!」

 嬉しげに微笑んだ千紗子さんは、やっぱりとびきり綺麗だった。

 
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