*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
「頂いた紅茶、ダージリンのファーストフラッシュなんだけど、杏ちゃんはミルク無しでも大丈夫?」
「うわ~っ、ファーストフラッシュなんて贅沢!もちろんミルク無しでお願いします。お砂糖も無くて大丈夫です。」
「了解。アンジュちゃんにはお水?牛乳も大丈夫?」
「お水をお願いできますか?今日は結構歩いたから、きっとアンジュも喉が渇いてると思うので。」
「分かったわ。ちょっと待っててね。」
それだけ言うと、千紗子さんはキッチンの中でテキパキと動き出した。
千紗子さんがお茶を準備してくれている間、窓辺に立って外を眺める。
流石に15階だけあって、見晴らしが抜群だ。
高架上にある線路を見下ろして、街並みの向こうにはついさっきアンジュと歩いた河川敷も見える。その向こうには山々があり、全てが五月の陽射しを受けてキラキラと輝いていた。
アンジュは窓辺の隅大人しく伏せて座っていて、明け放った窓から時折入る爽やかな風に、レバーブラウンの毛を優気持ちよさげにそよがせている。
本当は玄関の三和土のところでアンジュを待たせておこうと思っていたのだけれど、千紗子さんが強く勧めてくれたので、アンジュも一緒にお宅にお邪魔させてもらった。
持っていたウェットティッシュで、念入りにアンジュの脚を拭いておいた。