クールな御曹司の甘すぎる独占愛
未熟な防衛本能
水瀬のことは好きにならないほうがいい。
感覚的な防衛本能が、揺れる奈々の心を必死につなぎとめる。
類まれなる容姿に恵まれ、性格も文句のつけどころがない。そのうえネクサス・コンサルティングでは敏腕をふるうマネジャー職。そんな水瀬には、奈々ではなくもっとふさわしい女性がほかにいくらでもいるだろう。
だから、これ以上は……。
水瀬に《好きだ》と言われ、キスまでされた翌日、奈々はそんなことをぼんやりと考えながらあんを練る。昨夜からずっと頭の中を水瀬が占拠していた。
今日もいつもより早く出勤し、清人とふたりで和菓子作りに励む。ショーケースには色とりどりの和菓子が並んでいく。今日もサービスでひとつずつ付ける予定だ。
オープンの時間を迎え、お客が少しずつ入り始めた。
そろそろ初夏向けの和菓子も出したいな。定番のものじゃなく、新作も少し考えてみようかな。
水瀬をなんとか追いやり、頭の中であれこれと材料を組み合わせて考えていると、思わぬ人が来店した。
「奈々さん、こんにちは」