クールな御曹司の甘すぎる独占愛
「宮内こそ、国会議員の政策秘書だそうだな」
「ゆくゆくは国政に立候補しようと思ってる」
「宮内ならできるんじゃないか」
晶の言い方は一本調子だった。心がまったくこめられていない。
奈々はそんな晶を見るのは初めてで戸惑う。お互いに嫌い合っているのが目に見えてわかるふたりだ。
「そのときは応援をよろしく頼むよ」
「そうだな。気が向けば」
とことん気のない返事を晶が繰り返すと、宮内は苦笑いを浮かべた。
「相変わらずつれない態度だな、水瀬は。ところで、水瀬が和菓子好きだとは知らなかったよ」
そう言ってから宮内は奈々へ視線を向け、再び晶へ戻す。
「……もしかして春川さんと?」
晶と奈々は、宮内の前でまだなんの言葉も交わしていないのに、ふたりの関係性を即座に察したらしい。
国会議員の秘書ともなれば常に周りへアンテナを張り巡らせ、瞬時に人の内面を察知する能力に長けているものなのかもしれない。
だからと言って、宮内に報告する義務はない。
晶も奈々も黙ったままでいると、宮内は「なるほどね」とひとりで納得したように首を縦に振った。ニヤッと嫌な笑みが口もとににじむ。
奈々は、宮内に弱みを握られた気がしてならなかった。