クールな御曹司の甘すぎる独占愛
そういえば、今度エステラでハリウッド映画の撮影があると、真弓が言っていたことを思い出す。それが今日だったとは。すっかり忘れてリサーチしそこねていた。
「ミヤビ・キョウタニが来てるんですっ」
「ジャック・スペクターじゃなくて?」
確か真弓は、ジャック・スペクターだと言っていたが。
ミヤビ・キョウタニは父親がアメリカ人、母親が日本人のハーフで、アメリカ生まれのアメリカ育ち。三年ほど前にアカデミー賞で助演女優賞をもらってから、瞬く間にアメリカでトップ女優へと上り詰めた。
母親譲りと思われる黒いロングヘアに、父親の血を受け継いだ彫りの深い顔立ち。グラマラスな体型は奈々と同じ歳とは思えないくらいに大人の色香に溢れていて、同性でもドキッとさせられる。日本でも彼女の人気は高く、明美が興奮を抑えられないのは奈々もわかる。
明美によると、ホテルのロビーには人だかりができて、ものすごい熱気らしい。
「奈々さんも見てきたらどうですか?」
「私は大丈夫。明美ちゃん、ちょっとくらいなら行ってきてもいいわよ」
「本当ですか!? それじゃちょっとだけ」
奈々の了解を得た明美は、超特急で店を出て行った。