クールな御曹司の甘すぎる独占愛

◇◇◇

真弓がロケ目当てに顔を見せたのは、それから一時間経った頃だった。さっきの電話の直後に大急ぎで家を出たのだろう。美弥は真弓に抱っこされてお昼寝タイムだ。


「今見てきたんだけど、ミヤビ、めちゃくちゃ綺麗だったよ!」


明美に負けないくらいに興奮した様子で店に飛び込んできた。あまりにも野次馬が集まりすぎたようで、スタッフが規制線を張って、途中からはよく見えなかったそうだ。真弓のお目当てのジャック・スペクターはいなかったようだが、大物女優を見られて満足したらしい。

ひととおりミヤビの美しさについて語った真弓は、そこでようやく晶がいると気づき、口をポカンと開けて奈々を見る。実は真弓には、晶とのことをまだ報告していなかったのだ。

晶に向かって会釈をしながら、「ねぇ、奈々、もしかして彼とうまくいった?」と真弓が小声で奈々に尋ねる。


「うん、そうなの」
「やだー。どうして教えてくれなかったの?」
「ごめんね」

仕事がバダバタしていたことを理由にして真弓には許してもらったが、本来ならば背中を押してくれた真弓にはもっと早く報告すべきだっただろう。

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