クールな御曹司の甘すぎる独占愛
「ま、奈々が幸せならいいけどね」
自分はいい友達をもったと、奈々はつくづく思う。奈々が父親を亡くして、いよいよひとりになったときには、妊娠中にもかかわらず奈々の様子をちょくちょく見に来てくれたものだ。
「ありがとう」
奈々はせめてもの償いと真弓をテーブル席に案内し、サービスで和菓子を食べてもらった。
真弓が帰った直後の午後五時半過ぎ。賑やかな空気を店の入口から感じた瞬間、明美の「キャー!」という悲鳴が上がる。
なにごとかと奈々が目を向けた先には、ミヤビ・キョウタニの姿。取り巻きを引き連れて店内に入って来たところだった。
真弓をもう少し引き留めておけばよかったと思わずにはいられない。
テレビで観るよりもスレンダーで、圧倒されるほど美しい。全身から匂い立つような色気に目眩すら覚える。店内にいたお客たちから黄色い歓声が一斉にあがった。
「和菓子のお店かしら?」
アメリカで生まれ育ったと聞いているが、母親が日本人だからかクリアな日本語だった。