クールな御曹司の甘すぎる独占愛
予想もつかない展開を前にして、奈々の頭は困惑していた。
宮内から晶についての嬉しい話を聞かされたばかりだったため、目の前の光景との落差に言葉も出ない。晶を信じたいが、信じる材料を吹き飛ばすには、ミヤビの登場はあまりにも鮮烈だった。
「……晶? どうしたの?」
不穏な空気を察知したミヤビが、晶の腕に絡みつきながら首を傾げる。そこで奈々に目を向けたミヤビが「あら?」とポツリと呟いた。
「あなた、この前の和菓子屋の店員さんじゃない?」
どうしてあなたがここに?とでも言いたそうだ。まばたきを繰り返し、ミヤビは不思議そうな顔をしていた。
「せ、先日はたくさんお買い上げいただき、ありがとうございました」
動揺する気持ちを押し殺して奈々がやっとの思いで言い、「すみません、失礼します」とその場から逃げるように駆けだす。晶とミヤビが一緒にいるのを見ていたくなかった。