クールな御曹司の甘すぎる独占愛
なんでもないのと言おうとするが、どうにも笑顔にならない。そもそも夜遅くに真弓の家に押しかけた時点で、普通じゃないと彼女も気づいているだろう。
「あのね……」
奈々はついさっきのことをポツリポツリと話し始めた。
自分の置かれている状況を確認するには、誰かに話すのが一番なのかもしれない。一つひとつ話すにつれて頭の中が整理されていく。
ところが、それでまたさっきの出来事が蘇り、胸が苦しい。
「水瀬さんは、ミヤビとはなんの関係もないって言っていたんでしょう? それなら信じてあげたらどうかな。うそをつくような人には見えないし。奈々の話からすると、今夜はミヤビに無理に誘われたんじゃない?」
「そうなのかな……。でも誘われても断れるでしょ?」
つまり、晶もミヤビに少なからず好意はある。それも当然だ。なにしろあの美女なのだから。世界的にも人気のある女優から好かれて、嫌な気分になる男性はいないだろう。
奈々は自分を棚上げにした。自分だって、宮内を振り切れなかったのに。だがそれは、依子の顔を潰すわけにはいかなかったからだと正当化する。一度崩れた信頼は、そう簡単には回復できない。