クールな御曹司の甘すぎる独占愛
《な、なにを言ってるの、あなた》
ミヤビが珍しく動揺する。それを隠すようにミヤビは続けた。
《晶に本気じゃなかったら、なにが本気だっていうの? 失礼ね》
「本気で好きなら、彼を苦しめるようなことはできないです」
《好きだからそばにいたい。好きだからほかの誰にも渡したくない。それって当然でしょ?》
それが、ときに自分優先の想いにつながる。相手を苦しめることにも。
誰にも渡したくないのはわかる。それは奈々だって同じだ。本当は晶と離れたくはなかった。
《とにかく、あなたが晶と別れたのはわかったわ。もう話もないわね。じゃ》
ミヤビは忙しなく通話を切った。
奈々の手からスマホが滑り落ちていく。コトンと音を立てて、それはベンチの上に転がった。
これでもう晶との関係は本当に終わった。頬をひと筋伝った涙が、堰を切ったように溢れてくる。もう我慢はできなかった。
こぼれた涙がスカートに点々と染みを作っていく。奈々はそれを拭うことすらできず、声を押し殺して泣いた。