クールな御曹司の甘すぎる独占愛
宮内は答える代わりに眉間にシワを寄せた。
「上からなんか話をされてるんだろ?」
確かに上層部からここ最近、何度となく呼び出されていたのは事実。だがそれは、仕事の打診だ。それもこれまでになく大きな。
宮内にそう答えると、「話が違うな」と首を捻る。
「元気がなさそうだったと奈々さんから思われることに思い当たりは?」
「……日本を離れなければできない仕事なんだ」
スイスに初の支社を立ち上げることが決まり、その支社長の右腕として現地に行ってほしいとのことだった。長くて五年、短くて二年。向こうでの仕事を軌道に乗せるまでを任せたいと。大きなチャンスではあるが、奈々を日本に残していく踏ん切りがつかず、返事を保留にしている。
「奈々さんから店のことは?」
「店? 光風堂になにかあったのか?」
昨日、柳が閉店間際に行ったようだが、特に変わった様子があったとは言っていなかった。
「はぁ……ったくしょうがないなぁ。ミヤビ・キョウタニが光風堂を貶めたんだぞ」