クールな御曹司の甘すぎる独占愛

奈々が明美の肩をトントンと優しく叩いたとき。


「すみませーん。もう終わりー?」


店のほうから男の人の声が聞こえてきた。

明美と顔を見合わせ「お客様よ」と、ふたり揃って出ていく。するとそこには宮内がいて、厨房のほうを覗き込むようにして首を伸ばしていた。


「いらっしゃいませ」
「また注文をお願いしようと思ってね。おっと、今日もたくさん残ってるねぇ」


宮内がショーケースに並ぶ和菓子を見て茶化す。
間もなく閉店。店内にも客はもういない。製造個数を減らしてはいるが、今日もまた廃棄ロスが出る。

でも、宮内のように笑い飛ばしてくれたほうが奈々も気が楽ではある。


「宮内さんに買っていただこうと思って残しておきました」


冗談のつもりで奈々が言うと、宮内は「いいよ」と軽いノリで返した。


「やだ、冗談ですから」

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