クールな御曹司の甘すぎる独占愛
奈々は、途方もない年月に気が遠くなるかと思った。晶と一緒にいられたこの数ヶ月より遥かに長い時間を別々に過ごさなくてはならない。それも、スイスと日本という約一万キロも離れた場所で。
だが、行かないでと泣いてすがりつくわけにはいかない。そんなことをすれば、奈々がミヤビから晶を守ろうとしたことがなんの意味もなくなる。晶の仕事の成功は、奈々の喜びだから。
奈々は唇が震えるのを必死で抑えながら微笑んだ。
「頑張ってきてください」
奈々は日本を離れるわけにはいかない。光風堂をなんとしても守っていかなければならないから。
「奈々、ありがとう」
晶は奈々をそっと引き寄せ、唇を重ねた。
自分たちならきっと大丈夫。遠く離れても、お互いを想い合っていられる。
頼もしくも優しい腕に包まれながら、奈々は自分に言い聞かせるように心の中で何度も呟いた。