クールな御曹司の甘すぎる独占愛
「あ、ごめんね、違うの。もっとたくさんのお客様に会いたいなーって。これからも光風堂の和菓子を大勢の方たちにお届けしていけたらいいなと思ってね」
「そうですよね。奈々さんなら、きっとできます。日本だけじゃなく世界中の人たちに光風堂の和菓子を食べてもらいたいな」
実は少し前から考えていることがあった。ひと口和菓子は消費期限が二十四時間だから無理だろうが、多少日持ちのする占いしるこのようなものであれば、ネット通販も可能ではないかと。
それには職人を育てる必要もあるから、すぐには無理だが。ネット通販ができるようになれば、それこそ世界中の人たちに光風堂の和菓子を知ってもらえる。
「そういえば奈々さん、明日の約束を忘れていませんよね?」
明日は定休日。雑誌掲載のお祝いと称して、奈々と明美は宮内から食事に招待されている。
依子が花いかだの二号店として葉山の海辺に三ヶ月前にオープンさせたオーベルジュがあり、そこへ連れて行ってくれるそうだ。
レストランで出されるのは、もちろん懐石料理。前評判から高く、三ヶ月経った現在も予約がなかなかとれない。今回は依子が懇意にしている宮内だからか、なんとか手配してくれたそうだ。