クールな御曹司の甘すぎる独占愛

そのときはようやく首が座ったばかりの頃だった。美弥を恐々抱っこしたのを奈々はよく覚えている。

真弓は奈々から美弥を抱き上げ、「そろそろお腹が空く頃だねー」と、紅茶と一緒に作ってきたミルクを飲ませ始めた。すっかり母親の顔だ。

真弓は長かったストレートの髪を出産直前にバッサリと切り、さっぱりとしたショートカットにした。目鼻立ちのはっきりとした美人の真弓は、それにより親しみやすくなったように思う。それはもしかしたら、出産して母親らしさが出てきたせいもあるのかもしれないが。


「かわいいね」
「でしょう? 奈々はどう?」
「どうって、私は出産どころか、結婚だって遥か遠い話だよ」


彼氏ができる気配すらないのだから。もしかしたら一生独身を貫く可能性もある。


「エステラにいれば、素敵な人はたくさんいるでしょう?」
「素敵な人がいるからといって、私の彼氏になってくれるとは限らないから」


つい唇を尖らせて奈々が反論すると、真弓は「確かに」と笑った。母親が笑い、ミルクを飲んでいる美弥もキャッキャとうれしそうにはしゃぐ。

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