子爵は新妻を独り占めしたい
紗綾は切りつめるだけ切りつめて進学するために貯金していた２００万円と消費者金融から６００万円を借りて、田辺に８００万円を渡した。

その数日後に気になって田辺に連絡をしたが、
「おかけになった電話番号は現在使われておりません」

何故かそのアナウンスが聞こえた。

電話番号が間違っているのかと思って画面を確認したが、特に間違いはなかった。

仕事帰りに彼の自宅を訪ねたが、そこはもぬけの殻だった。

田辺の勤務先を訪ねて彼のことを聞いてみたが、
「そんな人は勤めていません」

そう言われて、会社から追い出されたのだった。

「――何で、どうして…？」

紗綾は何が起こったのか理解ができなかった。

電話をかけても繋がらない。

自宅を訪ねたら誰もいない。

勤務先を訪ねたら追い出された。

まるで、最初からそこに田辺はいなかったと誰もが言っている。
< 11 / 103 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop