子爵は新妻を独り占めしたい
家族も仕事も住んでいた家も学校も、そのうえ夢も失ってしまった。

今の自分の手元に残っているのは、借金だけである。

「――私が何をしたって言うの…?」

1人で夜の街を歩きながら、紗綾は呟いた。

自分は前世で何か悪いことをしたのだろうか?

どうして自分がこんな目にあわないといけないのだろうか?

家族を失い、恋人には騙されたうえに借金を背負わされた。

仕事も、学校も、夢も、何もかもを失った。

「――やっと、幸せになれると思ったのに…」

紗綾の目から涙がこぼれ落ちた。

(誰も私を必要してくれる人なんていないんだ…。

私なんか、この世からいなくなればいいんだ…。

ここから消えてしまえばいいんだ…)

紗綾はフラフラと夜の街をさまよい歩いた。
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