子爵は新妻を独り占めしたい
そんな紗綾の様子に、
「もし、あなたがよかったらなんだけど…」

エミリーは話を切り出した。

「私のところにこない?」

そう言ったエミリーに、
「えっ…?」

紗綾は首を傾げた。

「エミリー、君は何を…?」

「この子を放って置くことなんてできないわ」

何かを言おうとしたミゲルをさえぎるように、エミリーは言った。

「この様子だと行く当てはないみたいだわ」

「でも、もし悪い人だったら…」

「こんな大人しい子が悪いことをするなんて到底思えないわ」

エミリーに論破されたミゲルは何も言い返せない様子だ。

「あなた、私のところにきなさい」

エミリーは紗綾の顔を覗き込むと、そう言った。

「あの、いいんですか?

あなたはよくても、お家の人が迷惑じゃないかと…」

紗綾は呟くように言い返した。
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