子爵は新妻を独り占めしたい
「私が言っておくから、あなたは気にしないで。

行くところがないんだったら、私のところにきなさい」

そう言ったエミリーに、
「はい、そうします」

紗綾は返事をした。

「それじゃあ、行きましょうか」

エミリーにうながされて、紗綾はその場から腰をあげた。

「この先に私の家があるから」

エミリーが歩き出したので、紗綾は彼女の後ろを追うように歩き出した。

「ねえ、本当にいいのかい?」

ミゲルが声をかけてきた。

「何がですか?」

そう聞き返した紗綾に、
「エミリーは私の家にくればいいって言ったけど、君は嫌じゃないのかって。

もし嫌だったら断ってもいいんだよ?」

ミゲルは言い返した。

「そうですけど、他に行くところがないですし…」

呟くように言った紗綾に、
「まあ、君は悪い人じゃないと思うけど…」

ミゲルはやれやれと言うように息を吐いた。
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