子爵は新妻を独り占めしたい
ヨーロピアンな雰囲気の小さいながらも立派な屋敷と言ったところだろうか?

広い庭の中で静かに建っているそこは、レンガ造りの塀に囲まれていた。

(す、すごい…)

紗綾はポカーンと口を開けることしかできなかった。

自分が住んでいた築40年のアパートよりも広いと思った。

さすが、子爵家の令嬢だと紗綾は心の中で呟いた。

「ちょっと狭いのは仕方がないけれど…部屋はたくさんあるし、どれでも好きなところを使ってもいいから」

エミリーが笑いながら言った。

(いや、私からして見たら“ちょっと”では済まないです…)

心の中でエミリーに向かってツッコミを入れていたら、
「何だ、帰ってきたのか」

第3者の声が聞こえた。
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