子爵は新妻を独り占めしたい
「行くところもない、ましてやこの国のことを何にも知らない女の子を放って置くことなんてできないわ。

それこそ、悪いヤツにつかまったらどうするのよ？」

「そ、それは…」

バシバシと攻めてくるエミリーに、エリックは何も言い返せない様子だった。

「ウォルターズ家の当主は私よ。

あなたが嫁をもらって爵位を継ぐまでの間だけど、少なくとも今は私が当主だと思ってるから」

そう言ったエミリーに、
「勝手にしろ」

エリックはやれやれと言うように息を吐くと、家へと向かったのだった。

家の中へと入って行った彼の後ろ姿を見送ると、
「あの…本当によかったんですか？」

紗綾はエミリーに声をかけた。

「エリック、反対していたみたいだけど…」

紗綾と一緒に一部始終を見ていたミゲルも言いにくそうに声をかけた。
< 29 / 103 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop