子爵は新妻を独り占めしたい
「別にいいのよ。

と言うか、当主である私がいいって言っているんだから」

エミリーはフンと鼻息を荒く吐いた。

「こんなところで立ち話もあれだし、中に入りましょう。

みんなにもこのことを説明しないと」

エミリーは言った。

「じゃあ、僕はこの辺で失礼するよ」

そう言ったミゲルに、
「あら、そう。

じゃあ、カミラによろしくって言っておいてね」

エミリーは手をあげた。

「じゃあ、またね」

ミゲルは手をあげてあいさつをすると、その場を後にしたのだった。

「“カミラ”って、誰ですか?」

紗綾はエミリーに聞いた。

「ミゲルの7歳下の妹よ、18歳なの」

エミリーが質問に答えた。

「それじゃあ、私たちも入りましょう」

エミリーにうながされ、紗綾は彼女と一緒に家へと向かったのだった。
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