子爵は新妻を独り占めしたい
サンドイッチをかじると、
（美味しい…）

味覚を感じたのと同時に、これが久しぶりの食事だと言うことを思い出した。

恋人に騙されて借金取りに追われるようになってから、ロクに食事をしていなかったのだ。

紗綾はもう１度サンドイッチをかじった。

「――ッ…」

その瞬間、紗綾の目から涙がこぼれ落ちた。

「サーヤ様、どうかなされましたか？」

突然泣き出した紗綾にクレアが何事かと言うように声をかけてきた。

「違うんです…」

紗綾は首を横に振ると、
「サンドイッチがとても美味しくて美味しくて…」
と、クレアに言った。

「そ、そうでしたか…。

それはよかったです」

クレアはホッとしたように言った。

食事をすることがこんなにも幸せなことだったと言うことを忘れていた。
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