子爵は新妻を独り占めしたい
(反対していたはずなのに、何で?)

紗綾はカップに口をつけると、紅茶をすすった。

「エリックさんって優しいんですね」

紅茶で喉を潤すと、紗綾は言った。

「エリック様は不器用なところがございますから、周りから無愛想だ冷たいと言われるんです。

本当は優しいお方なんですよ」

クレアは言い返した。

その時、ガタッと言う音が部屋の外から聞こえてきた。

紗綾とクレアはお互いの顔を見あわせると、ドアへと足を向かわせた。

ガチャッとドアを開けると、誰かが逃げるように階段を下りている後ろ姿が見えた。

「エリック、どうしたの?

そんなにも急いで…」

「別に何でもない」

1階からそんなやりとりが聞こえてきた。
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