子爵は新妻を独り占めしたい
「彼女を俺の妻にする」

「…えっ?」

「ほら、サーヤが困っているじゃない」

宣言に戸惑っている紗綾にエミリーが言った。

「前言を撤回するつもりはない」

エリックはそう言うと、ナイフとフォークを手に取って食事を始めた。

エミリーは息を吐くと、
「食べましょう」

紗綾に食事をするようにとうながした。

「…はい」

紗綾は呟くように返事をすると、食事を始めた。

せっかくの朝食はすっかりと冷めてしまっていたが、味は格別だった。

(久しぶりに朝ご飯を食べたな)

紗綾は心の中で呟くと、朝食を口に入れた。

カチャカチャと、ナイフとフォークを動かしている音だけが大きく聞こえた。

紗綾はもちろんのこと、エミリーとエリックとクレアも誰も声をかけようとしなかった。
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