子爵は新妻を独り占めしたい
「何か不都合なことがあるか?」

「いえ、特には…」

エリックの質問に、紗綾は首を横に振って答えた。

「朝ご飯を食べた後に2人で出かけると言うことでいいな?」

そう言ったエリックに、
「はい、わかりました」

紗綾は首を縦に振ってうなずいた。

「じゃあ、これで終わりにする」

エリックはソファーから腰をあげると、ドアの方へと足を向かわせた。

「あの…」

紗綾が声をかけてきたので、
「何だ?」

エリックは振り返って自分を見た。

「…私の身の上話を聞いてくれて、ありがとうございます」

紗綾は呟くように、お礼を言った。

それに対してエリックは息を吐くと、
「聞いたも何も、話し始めたのは君の方からじゃないか」
と、言った。
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