子爵は新妻を独り占めしたい
「妻になるって、大変なんですね…」

先が思いやられているのを感じながら、紗綾は息を吐いた。

「でもその大変な出来事を乗り越えて、夫と一緒に歩んで行く――それが妻になることだと、私は思います。

最初から立派な妻なんていませんよ。

全員が全員、努力をして成長して行くのですから」

クレアが言った。

「そうなんですね…」

紗綾が呟くように返事をしたら、
「ですので、少しずつでもいいですから努力をしてくださいね」

クレアが言った。

(何だかお母さんみたいだな)

久しぶりに感じた母親の存在に、紗綾はクスッと笑った。

「はい、頑張ります」

返事をした紗綾に、クレアは満足したと言うように首を縦に振ってうなずいた。
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