恋して cha cha cha
パパッと荷物をカバンの中に入れると、
「お先に失礼します」

彼女はペコリと頭を下げて、逃げるようにオフィスを後にした。

何があったと言うのだろうか?

“ビルの前にいる”とかって言っていたけれど、誰かがきているのだろうか?

僕は彼女の後を追うためにオフィスを出た。

1階に降りてビルを出て彼女の姿を探していたら、
「由真ちゃん、どうしよう…!?」

その声が聞こえたので、僕は視線を向けた。

「――えっ…?」

目の前のその光景が信じられなくて、驚きのあまり声をあげた。

声が聞こえたのではないかと思って一瞬だけ慌てたが、気づかれていないようなのでホッと胸をなで下ろした。

近くにあった木に身を隠すと、もう1度その光景を見つめた。
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