Rouge
『なんて堕落した……』誰が見てもそう思う様な自分の姿である事は百も承知。
自分でも時々思い出して何をしているのかと呆れる程。
でも仕方ないと言えば仕方がないのだ。
ここには娯楽に繋がるTVもなければPCもない。
自分の持っていた携帯は……最後に見たのはいつだったか。
何にせよ電池も切れて使い物にならないだろう。
ここで私一人出来る事など限られているのだ。
ただ、ひたすらなる……無との対話。
それでもさすがに飽きたと身を起こしてみれば、人としてまともな機能が再開するわけで。
瞬時に沸いた欲求は『喉が渇いた』なんていう渇望。
カラッカラッの喉を確かめる様に一撫でし、欲求に突き動かされ気怠い体をのそりと動かしキッチンに向かったのだ。
そうして身を屈めなければ中を伺えない小さな冷蔵庫を開け放てば、さして冷やすものもないのに溜めこまれていた冷気が肌を掠めて室温に消える。
これすらもいつもの事。
伸ばした指先を触れさせたのはミネラルウォーターのボトルではなくよく冷えたビールの缶。
冷蔵庫を締め始めると同時にプシュッと欲求煽る音を響かせ、パタリと冷気を閉じ込め直した時にはゴクリゴクリとアルコールが喉を過ぎていた。