虫も殺さないような総長に溺愛されています

虫も殺さないような総長に溺愛されています

彼と口を聞く様になったきっかけはあの日…。

学校の屋上に続く階段。

通りすがりの何の気なし。

肩よりやや長い黒髪を揺らして廊下を歩き、たまたま見上げたそこに彼がいたのだ。

わっ、なんか儚げだけど綺麗…。

それが第一印象。

光を背に階段を降りようと、まさに一歩足を踏み出している姿は漫画のイケメンヒーローのよ…

「っ…ふぁっっっ！！？」

「あっ…」

「っ…タロぉぉぉぉぉ！！？」

一瞬の出来事でした。

イケメンヒーローの様に感じた彼は次の瞬間には足を踏み外し、どこぞの哀れなスタントの様に私の足元に転げ落ちてきたのです。

そんな彼の友達らしき少々強面イケメンが血相を変えて階段を降りてくるのも当然でしょうとも。

私だって足元に転がってきた人間を見なかったふりで立ち去る非情さなんてあるはずもなく、むしろ顔面蒼白で彼に「大丈夫ですか！！？」と、手を伸ばしたでしょうよ。