虫も殺さないような総長に溺愛されています
そんな私にボロッボロッな状態の彼が心配させまいとしてなのか、ヘラっと力のない笑みを浮かべたかと思うと…、
「怪我は…ないですか?」
いや、それはこっちのセリフですよね?
思いっきりズタボロに床に這いつくばってるのあなたの方ですよ?
一瞬頭を打ちまくって何か自分の都合の良い妄想の中におられるんでないかと、ますます心配になり血の気が引いたというのに。
「そう、巻き込まなくてよかった」
「っ…」
それが、
私、稲荷 花子(いなり はなこ)と矢内 太郎(やうち たろう)の出会いでありました。
【太郎】【花子】と何かの見本名な様な事はこの際置いておいて。
見事なスタントを披露してくれたおかげか、やや癖のある黒髪からシャツからズボンにまで、至るところに埃を纏った姿が力なくも頬笑んでこちらの身を案じてきてくれた事には素直に好感。
ってか、なんか幸薄げでなんか放っておけないし可愛い。
それをきっかけに顔を合わせれば会話をする様になり、いつからかその存在を探して一緒に過ごす様になっていた程。