虫も殺さないような総長に溺愛されています
えっ、本当に総長?あの総長?
喧嘩上等!夜露死苦!な、あの総長!?
この温厚誠実、見るからに非力で儚げで、虫も殺せなそうなタロ君が!?
「っ……まさかっ、またどっかから転げ落ちて、今度こそ脳内妄想に取り憑かれてるんじゃっ!?」
「あはは、いや、朝確かに家の階段は踏み外して一階まで転げ落ちたけど、」
「ギャアァ!ほらっ!やっぱりっ!」
「あ、いや、でも、総長の件は本当妄想とかでなくてね。これでもそこそこ名の知れた総長らしいんだ」
「…とりあえずさ、さっきから付属する『らしい』って何なのかな?」
「うーん、別に僕が『総長だ!オラッ!』と名乗りを上げた覚えがないのだけは確かだから?」
「そ、それなのに総長?」
「うん、それなのに総長みたい」
いやいやいや、『みたい』にっこりって。
これだけ何度復唱されてもしっくり来ないタロ君と不良イメージ。
むしろそんな世界とはかなり遠縁に身を置いて、下手したらそういう輩にカツアゲされるタイプに思えるのに。