虫も殺さないような総長に溺愛されています



まあ、実際はこんな風に頼んでもおねだりもしていないのに、私の分までメロンパンを調達してくれる優しく世話焼き~な良い人なのだけども。

髪はタロ君同様に黒色にストレート、切れのある双眸に耳にはピアスがいくつか。

基本ぶっきらぼうだから見た目も合わせて恐い人だと思われがちなんだよな。

まあ、何にせよ、

「ん~~っ、美味しいよ。外がカリッ、中がフワッ、鼻を抜けるバニラの香りっ、もうっ、カナイくん最高です」

「お前はどこぞのグルメ漫画の登場人物か」

「だって美味しい~、カナイくん好きっ」

折角の焼きたてが冷めて普通のメロンパンになってしまわない内に!

そんな感覚でかぶりついた甘味の幸福感への感動を実況中継し、それを与えてくれたカナイくんに感謝を表していれば。

「……おい、その笑顔恐えよ、タロ」

「へっ?」

ヒクついた表情でそんな言葉を漏らしたカナイくんの視線を辿っていけば、突き当たったのは私の隣で微笑むタロ君の姿だ。

恐い?

いつものタロ君の幸薄げで守ってあげたくなる微笑みだけどな?


「えぇ、そんな、仲良いなって見てただけだよ」

「いや、その視線に毒山盛りな気がして今も痛てぇんだけど」

「ハハッ、もうカナイってば時々発言が面白いよね」

「いや、俺としては今なんも面白くねえんだけど?」

「本当、『仲良いな』って思ってただけだよ。仲良くて……羨ましいなって」

ああっ、タロ君可愛い!

そして何でカナイくんはひたすらに引きつった顔してるんだろう?



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