虫も殺さないような総長に溺愛されています




私からすればどこも畏怖なんて感じさせない、むしろどこか寂し気に微笑んで『羨ましい』なんて言ってくるタロ君の姿。

そのままその視線がこちらに向いたかと思えば、メロンパンを持っていた手にスルリと絡みついてきた細くも男らしい骨格のタロ君の指先。

それにしても指の先までどこか儚げだなあ。なんて、感心して視線を絡めれば、私の顔を覗き込みふわりと不安げに微笑んでくる事には心臓が鷲掴みされた。

「僕の事も好きですか?花さん」

「っ~~、好きだよ!好きに決まってるじゃん!!」

「そ、……良かった」

あああああ~、その心底安心して顔ほころばせるのやめてっ!

心臓が締め付けられて最早メロンパンの甘ささえどっか飛んで行ったよ!?

どう見ても草食動物…しかも小っちゃいやつ、ウサギとかハムスター系でありそうなこんなタロ君が総長だとか言うんだもんな。

やっぱりしっくりはこないな。なんて疑問が再浮上してしまえばだ、

「カナイくん、」

「あっ?」

「タロ君が自分は総長だって言い始めたんだけど」

「ああ、総長らしいぞ」

「肯定!?いや、またここでも『らしい』っていう曖昧!?」

「驚くことに俺はその副長らしいぞ」

「もうさ、驚きで突っ込みたいとこが『総長』『副長』なんて部分じゃなくて『らしい』って言う曖昧さになんだけど」

いや、むしろカナイくんに対してはしっくりきすぎて驚きもないんだけどね。


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