虫も殺さないような総長に溺愛されています
それにしてもだ、タロ君もカナイ君も『らしい、らしい』とどこか曖昧な客観的。
あくまでも本人達に自覚は無いという言い回しであるのに、それを否定もせずに肯定気味。
この人達が不良?
片やバリバリ儚げな草食系、片や見た目はそれっぽいけど中身は世話焼きな良い人系。
超呑気にメロンパン齧る姿なんて思いっきり平和な高校生男子にしか見えないんだけどな。
ああ、そんな事思ってる隣でまさにタロ君が一口も齧ってないメロンパン落として哀愁の笑みを浮かべ呆けているっ!!
よく分かんないけど総長って人が見せる姿じゃないよね!?
いや、よくは分かんないけどさ。
「だ、大丈夫だよ!5秒ルールだよタロ君!!」
「いや、すでにタロが落としてから5秒経過してっから」
「………」
「あああ、元気出して!!私の食べかけで良かったらあげるから!」
「本当?じゃあ……」
「っ……」
「……遠慮なく」
ひたすらに無言で哀愁の笑みを広げる姿に、慌てて自分の食べかけを勧めて慰めてみると。
今まで哀愁たっぷりに地面に落ちたメロンパンを見つめていた視線がすぐさまこちらを捉えてツラリと笑う。
ほんの一瞬、本当に刹那にいつもとは違う彼の笑みを見た気がして、そんな感覚に気を取られている間に私の手を引き持っていたメロンパンに噛り付いてきたタロ君の姿。