国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
第六章　名もなき花
「え？　あの温室へ行ってたの？」

翌朝、今日もラタニア王国には晴れ晴れとした青空が広がっていた。

昨夜、庭園へ行くといって戻りの遅かったミリアンを心配したマリーアにどこへ行っていたのかと尋ねられ、ミリアンは庭園に行ったらラメダの花の毒に触れてしまい、レイに処置してもらった後、温室へ行ったと一通りの出来事を話すとマリーアは目を丸くして驚いていた。

今、ミリアンの部屋にはマリーアしかいない。彼女も言葉遣いを崩してミリアンと接している。ふたりの間に友情が芽生えたことは、誰にも秘密だ。

「あそこは国王陛下専用の温室で、普段は入れないところなのよ、私も行ったことがないし……なにしろ怪しげな植物が育成されているって」

そういって思わず口にしてしまった失言に、マリーアはハッと口を押える。

「そんなことないわ。見たこともない綺麗な花がたくさん咲いていて綺麗な所だったし、自由に出入りしてもいいってお許しをいただいたから、また行ってみたい」

元々、花が好きだったミリアンにとって庭園も温室もこの城に囲われてしまったことなど忘れてしまいそうになるくらい心休まる場所だった。できることならもっと植物のことを色々調べてみたかった。
< 127 / 295 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop