国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
教会から職場までは数キロの一本道だ。民家が軒を連ねる通りを行けば王都の中心街に出る。古びた茶革のブーツで地面を歩いていると、時折冷たい風が頬を掠めていく。膝よりも少し丈の長い白地のスカートの中にまで冷気が入り込んできて、ミリアンの素足を凍らせた。

(お給金もらったら、新しい洋服でも買おうかな……こんな薄地じゃ寒くて凍えそう)

王都にはたくさんの名家貴族が住んでいる。身なりを見ただけで位の高い人だとわかる。ミリアンと同じ年頃の娘は、上等な衣服はもちろんのこと胸元や指先には高価な装飾品を身につけていた。そんな身なりを羨ましいと思わないといえば嘘になるが、自分には縁遠い人たちだからと、ミリアンは分相応の格好で満足していた。

王都の中心に近づいて来ると、天にそそり立つように立っている塔がより大きく見えてくる。

“メリアルの塔”をシンボルに持つ巨大王都。それが、ラタニア王国の権力の象徴だった。
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