国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「セルゲイ様は真面目な方だわ、だからどんな話をしたらいいかいつも迷ってしまうの」

スープに手を付けながらミリアンが言うと、マリーアは小さくふふっと笑った。

「そうでしょう? でも、あんなお兄様でも一応奥さんいたのよ、十年以上前に亡くなったけどね」

髭を剃ればもっと若く見えるはずだが、十分妻子を持っていたとしてもおかしくはない年には見える。

「亡くなった……?」

「ええ。病で体調を崩されてそのまま……」

「そうだったのね……」

セルゲイの過去にそんなことがあったとは知らなかった。いつも毅然としていて自分を律しているのは、深い悲しみに捕らわれないようにするためなのかもしれない。そう思うと途端に切なさがこみ上げてくる。

「レイラ様は王都で店を営んでいたわ、明るくて美人でね、でも亡くなってからお兄様はあまり笑わなくなってしまった。今はあんな堅物だけど、昔は違ったのよ?」

まるで兄を擁護するような口ぶりに、マリーアは血のつながりはなくとも兄として本当にセルゲイを慕っているのだとミリアンは悟った。
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