国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
(この花、今日も咲いてないわね……本にも載っていなかったし、いったいどうすれば花が咲くのかしら)

「あなた知ってる? って、そんなことわかるわけないわよね」

そう言いながらミリアンはそっと緑竜の頭を撫でる。動物のようにふわふわの毛が生えているわけではないが、愛らしさがこみ上げてくる。すると、それはミリアンを見上げて甘えるように短くクエクエと鳴いた。

「え? 歌を唄って欲しいの?」

クエー。そう鳴いて緑竜はねだる。母親の緑竜が暴れ狂っていた時、咄嗟に唄ったミリアンの歌がどうやら気に入ったようだ。ここで唄ったところでほかに誰がいるわけでもない。ミリアンはすっと息を吸い込んで、優しい旋律を口ずさんだ。教会の子どもたちを寝かしつける時によく唄っていた子守歌だ。

ゆったりとしたメロディーに緑竜は身を丸めてうっとりとしている。幼い頃、怖い夢を見てなかなか寝付けなかった時に母によく唄ってもらった。そのことを思い出しながらほんのりと暖かな緑竜の背中を撫でる。風もないのに温室の植物がミリアンの歌に反応するように静かに揺れているようだった。

周りの空気が穏やかなものになると、ミリアンは静かに唄い終える。
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