国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「陛下、この男の身元は割れています」

「この者の言っていることに間違いはないか、セルゲイ」

「はっ、相違ございません」

数人の兵を引き連れたセルゲイが背筋を伸ばし、凛として返答する。

「こ、国王陛下……? まさか」

店主は、自分を鋭く見据えている男がこの国の王であることなど予想だにしていなかったようだ。目の前の男の素性を知ると、その威圧感に太った店主は今にも腰が抜けそうになって膝が笑っていた。そのうち失禁でもしそうな勢いだ。向こうには、まだ年端もいかない十歳前後の少年少女が身を寄せ合い、まるで家畜のように枷をつけられて不安げにしているのが見える。

「即刻退去しろ。さもなければ次はない」

「わ、わかった!」

相手がこの大国の国王陛下とあっては勝ち目どころか、藁にもすがる思いで逃げる方が得策と判断したのか、突き付けられた剣が収められると奴隷には目もくれず自分だけ荷造りを始め出した。

するとその時。
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