国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
ジェイスは見かけだけは甘い顔立ちをして穏やかな性格だが、情深い一面の裏で内心なにを考えているかわからないところがある。それを知っているだけにレイにとってジェイスは食えない男だった。
「あんな性悪なじいさんのところへ置いておくくらいなら、自分が引き取るって? はっ、君はそんな優しいやつじゃないだろう? 彼女と僕はいずれ婚儀を交わす仲なんだ、横取りしないでくれるかな?」
ジェイスはニコリとしているが、レイを見る目は笑ってなどいなかった。
「ジェイス殿、口が過ぎますぞ」
「いい。お前は口出しするな」
レイの傍らにいたセルゲイが一歩前に踏み出すと、レイがそれを無言で制する。セルゲイは低く唸りながら苦虫を噛み潰したような顔で引き下がった。
「婚儀? ふん、貴様の妄想癖もそこまでくると見上げたものだな」
「まぁ、彼女の口から実際了承の返事をもらったわけじゃないから、妄想と言えば妄想かもね、でも、ミリアンをこの国へ留めておく理由はないだろう?」
「彼女は我が王国の国宝である竜のロザリオを所持していた。なぜ、ラタニアの民でもない者が国宝を持っているのか……この国にあの娘を留めておく理由としては十分だと思うが?」
すると、ジェイスの浮かべていた笑みが冷笑へ変わっていった。
「あんな性悪なじいさんのところへ置いておくくらいなら、自分が引き取るって? はっ、君はそんな優しいやつじゃないだろう? 彼女と僕はいずれ婚儀を交わす仲なんだ、横取りしないでくれるかな?」
ジェイスはニコリとしているが、レイを見る目は笑ってなどいなかった。
「ジェイス殿、口が過ぎますぞ」
「いい。お前は口出しするな」
レイの傍らにいたセルゲイが一歩前に踏み出すと、レイがそれを無言で制する。セルゲイは低く唸りながら苦虫を噛み潰したような顔で引き下がった。
「婚儀? ふん、貴様の妄想癖もそこまでくると見上げたものだな」
「まぁ、彼女の口から実際了承の返事をもらったわけじゃないから、妄想と言えば妄想かもね、でも、ミリアンをこの国へ留めておく理由はないだろう?」
「彼女は我が王国の国宝である竜のロザリオを所持していた。なぜ、ラタニアの民でもない者が国宝を持っているのか……この国にあの娘を留めておく理由としては十分だと思うが?」
すると、ジェイスの浮かべていた笑みが冷笑へ変わっていった。