国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
――君、そんなこと言って隠してるつもりか? 気が付いているんだろう? ミリアンが亡国ソルマンテの“唄人”であることに……しかも純血のね。

先ほどジェイスに言われた言葉をフードを目深に被り直してふと思い出す。

(唄人……か)

ミリアンは自分の出生や自身の事を知らない。レイ自身も半信半疑だったため、彼女にはなにも告げていない。しかし、ミリアンの歌には不思議な力を感じる。そしてロザリオの存在。

ミリアンが身に着けていた十字に絡みつく紅の双眼を持つ竜のロザリオは、代々のラタニア国王が受け継いできたものだった。レイの父である先王、ティアゴ国王の代で紛失したと思われていたが、思わぬ形で発見することとなった。いったいどうやって父の手元から見ず知らずの娘の元へ国宝が渡ったのか、こればかりはいくら考えても答えを出すことはできなかった。

(無駄な思案は時間の無駄だな……)

雑念を振り払うように、軽く左右に首を振る。

するとその時だった。王都に出ている時はいつも過剰なほど神経を張り巡らしているというのにレイはその刹那、油断した。

「覚悟!!」
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