国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
王は常に孤独であり、常に命を追われるもの――。

万人に好かれる王などいない。必ず滾らせた敵意を向けてくる者はいる。恨まれる覚えはありすぎてわからないが、この男もそのうちのひとりなのだろう。しかし、ここで意識を手放すわけにはいかない。せめて城に戻るまでは……。

「いい。たいしたことない」

切れそうになる意識をなんとかつなぎ止め、しっかりしろと自身に叱咤する。ぎゅっと目を閉じ、ゆっくりともう一度瞼を押し上げると視界が先ほどより鮮明になった。

「ですが……」

「構うなと言っている」

一国の王が兵士に支えられるなど無様だ。そんな姿を晒してしまった苛立ちに、レイは心配そうに気遣いながら支える兵士の腕を払う。そして布で止血しながら苦痛に顔を歪めた。
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